「ラベンダー」という花の存在を初めて知ったのは、たぶん少女のころに読んだ「赤毛のアン」。
美しい中年のご婦人を、その存在感・優雅な雰囲気から「ミス・ラベンダー」と名付けてひそかにあこがれたアン。
当時まだ日本にはラベンダーなる花はあまり紹介されていなかった。
“どんな花なんだろう?”
外国の小説には、きまって芳しい野の花やおいしそうなお菓子が登場し、まだあまり裕福で無かった極東に住む私は、いろいろ頭のなかで想像をふくらましたものだ。
「失われた時を求めて」(M・プルースト作)・・・この中にも「マドレーヌ」という焼き菓子が登場する。
主人公がマドレーヌを紅茶に浸しながら食べる、そのシーンのなんと甘美なことだったか!
マドレーヌは程無く・・・・・神戸の菓子店で売っているところを発見!
母にねだり倒して買ってもらった。
美味しかったけど・・・・・なんだか悲しいくらい甘かった。
マルセルと物語の中で一緒に食べたマドレーヌのほうが・・・・もっと複雑な味だったように思う。
ラベンダーは・・・・私が大学生のころ、一大ハーブ・ブームが始まり
街の花屋さんでもラベンダーの鉢や苗が売り出されるようになった。
なんだか小さくてか弱そうな花だった。
それでも初めて富良野でラベンダーの畑を見た時の感動は、忘れられない。
あんなに小さくて存在感のない花が、集まるとこんなにすごい景観になるのか・・・・
そしてその芳しい香り!
こればかりは「赤毛のアン」を何度読んでも、感じることができなかったものだ。
マドレーヌを百個同時に食べたとしても、そんなに感動は無かっただろう。
見渡す限りのラベンダー畑は、「想像の中のミス・ラベンダー」以上の美しさだった。
毎年夏になると、富良野の紫のじゅうたんを想う・・・・
あこがれ続けた女性は、知りあってみたら想像以上にすてきなひとだった。